ますます大好評の『お仕事』シリーズ。「士業紹介」第3回目の今回は、私小桧山が、弁理士の内藤俊太さんのお話を伺います。

(以下、な=内藤、こ=小桧山とします)
こ:私は、「弁理士」と聞くと漠然と「特許をとる人」ということしか思い浮かばないんですが、 弁理士の資格があるとどういうお仕事ができるんですか?
な:新しい発明をしたときに、特許庁に出願して特許を取得しておくと、 その発明について20年間は自分一人が独占的に使えるという独占権が与えられます。 また、商標について同じく特許庁に出願して商標権を得ることができれば、 その商標について(こちらは半永久的に)独占的に使用することができます。
弁理士の仕事は、特許を取得しようとする人や会社(主に製造会社ですね) から発明の内容を聞き、できるだけ強力な特許が取得できるように発明説明文書を作成し、特許庁に手続を行います。 これが弁理士の最大の仕事です。 商標の仕事もありますが、技術の仕事が大部分なので、弁理士になる人も最近は技術系が大勢を占めていますね。
こ:SOHO事業者の場合、いろいろなコンテンンツやものづくりをしていることが多いのですが、 弁理士さんにお願いするのはどういう場合が考えられますか?
な:コンテンツということは著作権が大部分でしょうね。著作権については、 官庁に申請して登録するまでもなく権利が生じますので、弁理士の出番はほとんどありません。
こ:えっ!そうなんですか!? 著作権は、特許とは違うんですね。
な:ものづくりが発明といえる分野であれば、特許がとれるかも知れません。 その場合は弁理士の出番です。一時期ブームだったビジネスモデル特許につい ても私たちの分野です。また、商標権を取っておきたいというときも弁理士 に相談してください。
こ:なるほど〜。特許権と商標権は、弁理士さんにお願いするわけですね。 ところで、弁理士さんに仕事をお願いする場合、料金はどうなりますか?
な:いい特許を取得するためにはいい明細書を仕上げる必要があります。 これが結構大変な仕事です。また、特許庁に明細書を提出した後も、特許になるま でには特許庁とのやり取りがあります。特許庁に対して1件特許出願して特 許になるまでに、50〜100万円の出費は覚悟する必要があるでしょう。 商標の仕事は特許に較べると手数料は安くなっています。私は商標をやらな いので正確には分かりませんが。
こ:特許1件出願で50〜100万円というのは、結構かかるものですね…。 それではせっかくの機会なので、弁理士の仕事をしたいと思っている読者を 代表して教えていただきたいのですが、弁理士の資格があれば一般的には、 どれくらいの収入が見込めますか?
な:弁理士の勤務形態としては、(1) 独立して特許事務所を開業する、(2) 特許 事務所にサラリーマンとして勤務する、(3) 製造会社の知的財産部などにサラリーマンとして勤務する、 といった形態がありますが、比率的には、弁理士一人、あるいは二人で開業している特許事務所(個人事業)が多いです。

弁理士の報酬はそれこそ実力次第で千差万別のようで、全体像は私もよくわからないのですが、 特許事務所に勤務する弁理士でも、発明説明文書(明細書といいます)をうまく書く能力がないと、 簡単に解雇されると聞きます弁理士に業務を依頼する顧客は、大部分が中規模以上の企業ですから、 このような企業の知的財産部から、「あの弁理士はいい明細書を書く」と評価されないと、報酬のアップは難しそうです。
こ: では、もう一点お聞きしたいのですが、弁理士の資格はどうやって取得するのですか?
な:特許庁が実施する弁理士試験に合格すると資格を取得できます。 弁理士試験は1年に1回行われ、1次試験(短答式)(5月)、2次試験(論文)(7月)、 3次試験(面接)(10月)にそれぞれ合格すると最終合格です。 たとえ1次試験に合格しても、2次試験に不合格であると、翌年にまた1次試験から受験しなおす必要があります。 試験の内容は、特許法などの産業財産権法に関する法律の試験が主体です。 2次試験には、選択科目として専門科目(機械工学とか)があります。 ただし、大学院修士課程を出ていると選択科目が免除になることがあります。

受験資格は特にありませんが、選択科目免除のためには大学院を出ている必要があり、 それ以外の人は、工学系あるいは法律系の選択科目に合格するだけの学力が必要となります。
受験のための勉強は、特許法などの法律の勉強が主体となりますが、専門学校をはじめ、 受験機関は充実していますので、これらのカリキュラムに沿って勉強するとよろしいでしょう。
こ:合格するのは、むずかしいですか?
な:平成16年の試験では、志願者数は9642人、最終合格者数は633人、 合格率は7.1%でした。合格率は年々アップしており、 10年前(合格率3%以下)に比較すると格段に合格しやすくなっています。 それでも、今年の合格者の平均受験回数は3.6回となっており、 長い年月をかけて最終合格に至っているようです。 今でも、最終合格するためには2000時間前後の勉強が必要なのではないでしょうか。
こ:合格率が7.1というのは、結構難しい試験ですね。 お仕事をする上で、どういう方が弁理士さんに向いていますか?
な:基本的には、「現在特許関係の仕事をしている人が、 仕事の必要から取得する」というパターンが多いのですが、 現在特許関係に携わっていない人だとそうですね…「人がした発明の内容を聞いて、 いい特許が取れるような発明説明文書(明細書)を執筆する仕事はおもしろそうだ。 それに法律が絡むなんて、 さらにおもしろそうだ。」と思える人には向いていますね。
こ:なるほど!
ところで、男性の場合はお仕事一筋の方も多いかも知れませんが、例えば、 共働きの中で、仕事と家庭とのバランスや個人事業だからこそできること、 もしくは反対に、できにくいことなどがあれば教えてください。
な:弁理士に仕事を発注するのは大部分が大企業であり、 各企業は発注先の特許事務所を半ば固定しています。ですから、資格を取得してSOHOとして個人開業し、 顧客を開拓するというパターンは難しいように思います。

そういった例も皆無ではないようですが、 それにしても技術のバックボーンなどを持ちながら顧客開拓を行っていく必要があります。 特許事務所勤務からはじめるのが通例でしょうが、特許事務所に勤務する上では弁理士資格は必要ありません。
そのかわり、顧客を得る目途がついているのであれば、個人開業できます。 他の士業などと同じように、個人事業の自由度と不自由度が存在すると思います。
こ:最後に、努力して資格をとられて、お仕事をされている中で、 その仕事をしていてうれしかったことや、逆に困ったことなどありましたら、差し支えない範囲で紹介していただけませんか?
な:そうですね〜うれしかったことといえば、仕上げた明細書を発明者が見て、 「自分が書いたよりも立派な発明であるように書けている」といってくれたとき。 特許になりにくいきわどい発明について、特許庁を説得して特許を取得したとき。 「他社の特許をつぶしてくれ」との依頼を受け、特許庁を説得し、その特許をつぶすことに成功したときですね。

困ったことは・・・・
個人事業の常で、仕事がものすごく集中したり、逆に仕事が切れることがあったりするのはやはり困ったことですね。
こ:長いお時間をさいてくださってありがとうごございました。 お陰で、弁理士さん(特許事務所)とはどんなお仕事をされるのか、 大体イメージがつかめました。読者のみなさんを代表してお礼申し上げます。 これからも、ますますのご活躍をお祈りしています。

《士業班スタッフ》小桧山千恵子、大江亜里朱

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